RS関連資料

ロードサービスの経緯

■日本におけるロードサービスは、昭和37年(1962年)に創設された社団法人 日本自動車連盟(JAF)が、当初から一般民間事業者とは異なる全国組織の公益事業法人として、極めて優遇された体制の基に当該サービスを寡占化していました。

■平成8年(1996年)当時、行政改革・規制緩和が時代の趨勢として推進され、高度経済成長と共に飛躍的な発展を遂げた車社会における交通安全特別対策委員会、規制緩和委員会等が国会において設置され、併せてJAFの独占問題についても検証が実施され「JAFに関する座長レポート」(中村正三郎 当時衆議院議員)が発表されました。

■規制緩和の潮流を踏まえ、ドライバーの視点に立脚した新しいロードサービスのあり方を協議・検討すべく趣旨を以って、日本ロードサービス協議会が設立(平成8年・1996年4月)されました。

■私達、民間ロードサービス事業者の活力を結集した全国ネットワークの構築と、特定の会員にサービスを限定することなく、また対象車種を区分することなく、すべてのドライバーを対象として24時間/年中無休体制で車の救援活動を展開する、新しいビジネススキームは、日本ロードサービス協議会の指針に沿って誕生しました。


【社団法人日本自動車連盟(JAF)に関する座長レポート

行政改革、規制緩和を進めて行く上で公益法人問題は避けて通れない。

 公益法人はその数、26,312、内法律に基づく指定により何らかの行政の代行機能を持ったものが137ある。

 これらの法人は民法に定めるところによりよって設立されているが、明治29年に制定された民法には、34条に祭祀、宗教、慈善、学術、技芸その他公益に関する法人が作れる事、58条、59条の監事を置くことができる程度の事しか定められておらず、そこには、何のためにどういう団体に法人格を与えるのか、何が公益かも示されていない。

 この極めて大雑把な民法に基づいて作られる公益法人は、民間の発意により設立される建前になっているが、実態は主務官庁のOBと業界代表によって役員が占められているケースが多い。

 一旦設立してしまうと、内部に監事を置くことは義務ではないし、置いたとしてもその監事は法人の運営、財産の状況に不整(この整の字に注目いただきたい。)がある時は、総会又は主務官庁に報告する事が義務づけられているだけで、必ずしも主務官庁に報告しないで良いのである。

 そのため一旦設立してしまえば、国の関与は極めて薄くなり、行政改革も規制緩和も無縁の世界となりがちである。

 そして大きく分けて二つの問題がある。

 一つは、法律によって行政の代行機能を果たすべく指定された、指定法人が適正な仕事をしていないケースである。又、法律による指定を受けていないにもかかわらず、行政の代行機能をはたしている法人があることである。

 二つ目は、一般営利法人が行ないうる仕事を公益法人が行ない、営利法人が行なえば法人税が課せられるのに、公益法人が行なえば法人税、地価税、場合によっては地方税まで免税され、もしくは軽減されることである。そして公益法人が民業を圧迫し、健全な業界の発展を阻害しているケースもある。

 税制も33業種を指定して公益法人課税を行なっているが、この33業種に入らないものは課税を免れるという結果となっている。

 以上の問題をすべて解決するためには法制度の整備が不可欠であるが今回は、問題の大きな公益法人について一つ一つ改善をすることを手がけたい。

 本日は、社団法人日本自動車連盟(JAF)の抱える問題を取り上げる。

 JAFは定款には色々な事業を掲げているが、大きく分けて、路上における故障車の牽引・修理などの業務と、旅行サービス業と、自動車レース・ラリーなどの運営を行なっている総従業員3.500名の社団法人である。

 収入の大部分は会費で、平成6年度で、年間453億円以上になる。

 人件費総額は、同年度で22.131百万円で、3.500名で割ると従業員一人当たり平均1ヶ月526.930円となる。従業員の平均年令は31.2才である。

 同年度役員報酬総額は129.026千円で常勤役員8名で割ると1人当り平均1ヶ月1.344.021円となる。

 役員構成は、理事53名中、27名が自動車関連業界の者で占められ、専務・常任理事16名中、14名が自動車関連業界の者で占められている。

 JAFは、主として自動車販売店が車を売る時に、顧客に入会を勧めて会員を獲得し、年間4.000円の会費を取り、その会員に対し路上で故障した時などに、牽引・修理などのサービスを行ない料金を得ることを業としている。会員以外の需要にも応ずるが高額の料金を取る。

 結果として、平成6年度の収支決報告書によると、収入総額552.6億円、資産総額766.7億円、流動資産497.4億円、内現金預金だけで374億円、電算化引当金など引当金320億円に剰余金74億円と未経過会費237.6億円をたすと、株式会社なら課税対象となる利益が約630億円にのぼる。

 すなわち、主に自動車業界が会員を集め、自動車業界が実質的に理事会を支配することが可能な理事構成の下で、公益法人が莫大な利益を上げ、課税はされないという状態になっている。

(1)以上の業務は、特定の会員を対象とした営業であり、公益法人の行なう業務は積極的に不特定多数の者の利益の実現を目的とするものでなければならないと定めた指導監督基準に反している。

(2)又、常に自動車販売店のアフターサービス業務や、町の修理工場の仕事と競合し、自動車販売店などに「なぜ売った販売店がやらないのか。」と苦情が寄せられている。その上JAFは2t以上の車については取り扱わず、販売店や修理工場などが対応している。
 これは公益法人の行なう業務が営利企業の事業と競合する結果となった時(事業の種類・内容・実施方法・対象者等が営利企業のそれとさして変わりが無くなった場合)は、公益法人は自主的に解散するよう指導することと定めた指導監督基準に反している。
 JAFは旅行斡旋業を行なっているが、これも問題なことは論をまたない。
 JAFが自動車専用道路上で業務を行なう場合、道路管理者は通行料を徴収せず、一般の業者からは通行料を徴収する。又JAFは道路管理者から駐車場や事務所などの提供を受けている。勿論一般業者にこのサービスは無い。
 警察庁はJAFの作業車に対して、公益法人のやる業務は公益事業だといって、緊急自動車の指定を行なっている。一般業者は同じ作業をしても、指定を与えられない。
 最近になって警察庁は、道路公団などの道路管理者と業務委託契約を前提として、常時出動できる体制を有していること、車両待機場所が確保されていること、などを条件に緊急自動車の指定を行うと明言しているが、民事上の契約を前提とするのは問題であるし、常時出動体制を有しているものだけしか指定しないのは、緊急自動車の意味から云って理解できないし、弱いものいじめで公正な競争を制限する結果となる。
 結果として、一般業者は自動車専用道路では仕事がやりずらく、民業が圧迫されている。(この件公取の視野の中にあるもよう)

(3)JAFの理事構成(別紙)は自動車業者の者がJAFを実質的に支配可能な構成になっている。
 これは、理事のうち同一親族、特定の企業の関係者その他特別の関係にある者が占める場合には、その割合は理事会を実質的に支配するに至らない程度にとどめるものとすると定めた指導監督基準に反する。

(4)JAFは、子会社三社(別紙)を設立し、通信販売・印刷・旅行業・保険代理業・広告などを行ない営利を求めている。
 この三社の株主は総て1名で、JAFのみで全株式を所有し、役員は、僅かな例外を除いては、総てJAFの会長・副会長・理事が兼任していて、これらの役員には、報酬が支払われている。
 しかもこれらの会社は、ロードサービスを受けることを目的に入会した会員の会員番号を、通信販売・旅行斡旋・広告宣伝などにそのまま流用していることは許し難い。

 これは、公益法人は、営利企業を設立し当該企業と一体と認められるような状態(当該公益法人から実質的に支配し得る程度の役員の兼務及び出資が行なわれること。)で営利の追求を行なってはならないと定めた指導監督基準に反している。

 最近JAFは、これらの株式会社に対する出資比率及び役員の兼務比率を1/2以下とするとして、形式的に改革を行っている模様だが、役員に関しても、現職の理事を辞任させて、JAFのOBを役員に就任させている模様である。

 JAFは自動車によるレース、ラリーなどの競技に関し、ヨーロッパを中心とする自動車競技のオーガナイザーであるFIAの日本代表となり、FIAの競技規則(スポーツコード)を、国際スポーツ法典と訳して定款にのせ、ヨーロッパの一レースオーガナイザーにすぎないFIAの規則に従って自動車スポーツを運営するとうたっている。しかも、レース・ラリーは、各国の自動車メーカーの利害が絡むと同時に、興行としての成果が問われるため、この国際スポーツ法典なるスポーツコードは頻繁に改定される。最近でも、突然ホンダのエンジンに不利な改定が行われたことは有名である。FIAはF-1レースを頂点とするレース興行をオーガナイズする組織であり、興行の利害が絡むため、本来当然に排他的であると同時に、レースを開催したり、参加したりする者から色々な収入を得る。

 JAFは多額な負担金をFIAに支払っている。

 このため、JAFはFIAのやり方以外のレースに対して極めて排他的であり、又別添の通りあらゆる機会をとらえて料金を取り、その中にはFIAの取り分も含まれている。

 JAFがJAFのモータースポーツに関係する者から収入する金額は、年間5億円を超え、一般のスポーツカークラブなどクラブの年会費だけで5,000万円を超える。

 JAFは年間数千万円の旅費を使いFIAの会合に出席しているが、平成元年から平成5年の間60回出張するうち、米国へ行ったのはたった4回のみで、あとはほとんどがFIAの本部のあるフランスへの出張である。

 結果として自由にモータースポーツを楽しみたい人々や、特に米国のレースオーガナイザーや、日本で米国系のレースをオーガナイズしようとした人々と激しく対立し、FIAルールに従いJAFに金を払った者以外を排斥してきた。過去に新聞社が米国のインディレースをやろうとして対立したり、最近は米国のクラシックカーの団体を、FIAのライセンスが無いことを理由に追い返したことは有名である。そして日本の人々はF-1だけがレースだと思わされ、日本の最大の友好国である米国のレースを知らない。(この件公取の視野の中にあるもよう)

 ホンダとトヨタはFIAの体質を嫌ってか米国のレースにコミットしだしたようだ。F-1はもはや米国では開催されていないし、ホンダはもうF-1にエンジンを提供していない。トヨタもFIAのラリーから撤退した。

 なぜJAFが日本のモータースポーツの為に多額な負担金まで支出してヨーロッパのFIAに従属しなければならないのか全く理解できない。

 又、JAFは、自己の競技組織に関する規定で、JAF公認競技の映像権はJAFに帰属することとし、JAFの常任理事の瀧氏を社長とする別会社を作りそこに映像の2次使用権を与えた。

 とても公益法人のやることとは考えられない。(この件公取の視野の中にあるもよう)

 いずれにせよ自動車競技の世界は、誰がやっても、車やエンジンを使う限り、一握りの自動車メーカーのセールスプロモーションの為の世界に巻き込まれると同時に、興行の利害がつきまとう世界であり、とても公益法人のやるべき仕事とは云えない。

 しかも、JAFは、このモータースポーツ業務で、609百万円の収入に対し、887百万円の経費を支出し、277百万円の赤字を出し、ロードサービスを受けるために入会した人々の会費収入により、この赤字を補填している。

 このことを一般会員は知らされていない。

 JAFの実態は、JAFの元関係者から聞くところによると、8つある地方本部と、その下に53ある支部によって、分割的に運営され、自動車販売店が入会を勧め、会費は地方支部に納入されるため、資金は地方支部にプールされており、経理が一本化されていないとのことである。

 そして地方支部長は、自動車販売店の人間によって占められていると聞く。

 自動車販売店が会員を募集して、本部においては自動車業界が理事会を支配し、地方においては自動車販売店が資金と運営を支配している公益法人が、民間株式会社の商売と同じことをやり、全く納税義務がないままに、株式会社なら当然課税対象となる利益を630億円もため込んでいることとなり、極めて具合が悪いことになる。

 結果として、著しく国民の納税意欲を損ない、課税当局を悩ませている。

 モータースポーツ分野については、JAF関係者の意見を聞くと、モータースポーツには極めて多額な金がかかる、そのため、興行として成功すること、そしてその収入を得ることが不可欠であるとのことである。

 そのためFIAの傘下に入り、FIAのスポーツカレンダー(一年のレース興行の予定を記したもの)に登録する必要があり、JAFでも(国内カレンダー)を作りレース興行を組織することを行ってきたとのことである。

 又FIAの傘下にないと、F1の日本興行をやってもらえないので困るとの意見もあった。

 F1を頂点とするFIAのレースをやりたい人は、FIAの傘下でやれば良いのであって、一般の自由にモータースポーツを楽しんできた人々にとっては迷惑な話でしかない。

 このことに関する最近の、専門誌の論調を資料として提出する。

 以上述べた通り、モータースポーツの世界は、およそ公益法人の係わるべき仕事とは無縁の世界であると同時に、車の修理をしてもらうために入会金を払って入会した人とも無縁の世界である。

 「公益法人に関する問題」で述べた、3つめの、公益法人の事業が一般の営利企業の事業と競合する結果となり、営利企業は課税され、公益法人は課税を免れ、結果として民業を圧迫しているケースに当たる。

 「改革の提言」で述べたように、経営形態を株式会社に移行させるべきであろう。

 そして行政改革の観点からは、JAFの実態に即して地方組織に分割して、とかく評判の悪いJAFのロードサービス事業に、競争原理を導入すべきであろう。


全国ロードサービス協会 : 設立趣旨

 21世紀を間近に控えた今日、政治・社会・経済構造の改革が重要な課題として提起され、将来のビジョンを構築すべく行政改革・規制緩和が時代の趨勢として、いま推進されています。

 日本の高度経済成長と共に飛躍的な発展を遂げたモータリゼーションは、既に経済活動において必要不可欠なものとして、また日常生活においても完全に我々のライフスタイルの中に定着しています。

 それ由に、人と車を取り巻く環境を客観的に見直し、“人に優しい豊かなカーライフ”を提供する新しいサービスの充実が、いま社会のニーズとして求められています。

 日本ロードサービス協議会は、この様な社会情勢を踏まえ、ユーザーの視点に立脚した、新しいロードサービスのあり方を協議・検討し、独自性のある基本コンセプトに基づくサービスと付加価値の提供を以って、社会に貢献・寄与することを趣旨として設立するものであります。

平成21年3月12日

全国ロードサービス協会
設立準備室